ラジオ出演とその内容
「三宅島に子どもが戻らない」NHKラジオで会長語る
2006年7月4日、午前7時20分からNHK第1放送で佐藤会長が「あさいちばん」に帰島後4回目の出演をしました。
木村 木村 7時20分になりました。今朝の「ラジオあさいちばん」は木村和義と・・・・・。
遠田 遠田恵子がお伝えしています。
木村 「ニュースアップ」です。けさのニュースアップでは三宅島を取り上げます。三宅島に出されておりました避難指示が去年2月に解除されて、島にも戻れるようになってから間もなく1年半になろうとしています。現在三宅島にはおよそ2、900人の島民が戻っていて、住宅の再建や農業、観光などの産業の復興が徐々に始まっています。しかし、今も火山ガスの放出が続いておりまして、島のおよそ45%の地域は立ち入りが規制されています。
このため、およそ900人がまだ島に戻れず、特に子どもは極端に少なく、少子化が深刻になっています。島に戻って1年半が経とうとする三宅島の現状と、今、島の人たちが抱えている問題について、三宅島ふるさと再生ネットワーク会長の佐藤就之さんに伺います。
佐藤さん、おはようございます。
佐藤 おはようございます。
木村 三宅島の避難指示が解除されておよそ1年半になりますけれども、今も火山ガスの放出が続いているということも聞いております。現在の状況はどういう様子でしょうか。
佐藤 まだ、1日900から1,700トン出ているのですが、これも噴火当初の10分の1に減少になっているということで、減少傾向が続いております。
木村 それは火山ガス。
佐藤 はい、火山ガスです。
木村 暮らしの様子はどうなんでしょうか。
佐藤 この夏を向かえまして、大きなイベントを行ってお客さんにいっぱい来てもらおうと一生懸命努力しています。例えば7月15日にはうたの祭典と宵宮、それから16日には、おみこし(牛頭天王祭)が久しぶりに、7年ぶりに出ます。それから29日、30日は海の祭りで、これには中越の被災地から大きな花火も連帯のために持っていきたいといううれしいお話も聞いております。
木村 住宅の再建などの身の回りの再建はどうでしょうか。
佐藤 これもまだ続いておりまして、ちょっと村を歩いてみますと、まだまだ建てかえだとか修繕、特に地震もひどかったものですから、住んでみますと見えないところが、例えば下水道がだめだったり、被害がまだ続いている状態で修繕に追われている状況です。
木村 まだまだこうした問題があるということですけれども、佐藤さんのお声にも、以前伺ったときよりもより力強さが戻っていることにとても勇気づけられるのですけれども。
佐藤 ありがとうございます。
木村 ただ、今三宅島に戻ってる人が2、900人ほどで、まだかつての75%程度にとどまっているということです。とりわけ子どもたちが島に戻って来ないということなんですけれども、これはなぜなのでしょうか。
佐藤 やっぱり、子どもに火山ガスが影響するということも専門家から言われておりますし、学校の友達関係も、ようやくできたのにまたここで引き離すということを考えますと、子育て世代という人たちが帰って来ない状態ですね。
木村 そうした子どもたちが島に戻って来ないということで、島にはどういう影響が出てきているのでしょうか。
佐藤 そうですね、今議論されているのが、小学校、中学校がそれぞれ3校ずつあるんですが、これを1校に統合してしまおうということが教育委員会でも出されました。9月の議会で決めていって、来年にはそれぞれ1校体制にしていこうということなんです。実は小学校生が30%(63人)、中学校生が36%(44人)しか帰島していないんです。これが固定化をしてしまうのではないかということで、こういう決定をされているんです。
木村 小中学校3校ずつ、合わせて6校あったのが、それぞれ1校ずつというのことは、島に小学校が1つ、中学校が1つになってしまう。これは、島の将来に向けてどのように響いてくるのでしょうね。
佐藤 5年後も現在の子どもの数が変わらないという前提に立っておるので、私はまずこれにちょっとショックを受けました。このまま決定をしますと地域格差が生れてくる。また1校になりますと小学校、中学校へバスで通わなければなりませんし、それから、いわゆる高濃度地区というところを通ったりしますので、やはり親たちに安全の不安が生まれてくると思うんです。そうなってきますと、学校のない地区というのは、産業も含めてさびれてしまうという危険性があるわけです。
一方で、65歳以上の年齢が今42%なるんです。これは人口構成、全国が21%ですから、倍の数になって、高齢化・少子化の非常に深刻な問題が生れてきてしまうことになります。
木村 小中学校の統合というのも非常に苦しい選択なのかもしれませんが、こうした問題を解決していくために、佐藤さんは何をどうすべきだとお考えでしょうか。
佐藤 私は、毎回言っているんですが、被災地であるということを再確認して、被災者対策というものをもう1度きちんと位置づけて、やはり帰れない人たちを帰す努力、これは住宅問題。それから調べてみましたら、高濃度地区の人たちはみんな元のところに住みたいということで動かないでいるんです。
木村 ガスも濃い・・・・・。
佐藤 火山ガスが流れてくるところにね。そうしますと、その人たちが再起できるような機会を与えていきませんと、非常に産業復興を含めて難しい問題が次から次へ出てくるのではないかと思うんです。災害対策の部門はそれぞれ、村も都も解散しましたし、そういうことを考えますと特養の100人近くの人が東京近辺の老人ホームにみんな入ったままなんです。これは再開されていません。
また、空港もまだできていません。高濃度地区問題も解決しておりません。それから子どもも30%台しか戻ってきていません。こういうことを考えますと、もうちょっと被災者対策、救済という問題を真剣に考えないと人口は減るばかりになってしまうのではないかなと思います。
木村 佐藤さんがおっしゃる人口は減るばかりというのは島の将来像というのですか、ここに非常に深くかかわりますね。
佐藤 大きな問題になりますね。そういう点では、お隣の八丈島では、航路利用者・観光客を1万人呼ぼうということで、航空の運賃の値下げをして観光に努力をしているんです。このように、復興のための努力目標を村長さんを初め島民と一緒になって、もう1回見直しをして、立て直しをすべきではないかなと私は痛感しているんですけれども。
木村 子どもたちが安心して戻ることができる、つまり、親が子どもを連れて戻ることのできる島ということが、三宅島が5年、10年後にきちんと暮らしを営むことのできる島にできるかどうか、今、非常に重要なところに差しかかっていますね。
佐藤 はい、そうだと思います。
木村 どうもありがとうございました。
佐藤 どうもよろしくお願いします。
木村 この時間は、三宅島ふるさと再生ネットワーク会長佐藤就之さんに伺いました。
――了――