ラジオ出演とその内容
帰島から2年。在京の三宅住民が集う懇親会
2006年12月16日TBSラジオ・番組名「森本毅郎・スタンバイ!」(8時20分から)より、2006年11月11日に開催された第2回三宅島在京懇親会(巣鴨・桜花苑)の模様を紹介されました。担当は森本毅郎キャスター、遠藤泰子アナウンサー、生駒佑人記者です。
森本毅郎 人権をめぐるホットな話題をお伝えする「人権TODAY」、けさの担当は生駒佑人記者です。おはようございます。
生駒佑人 おはようございます。
森本毅郎 けさは何の話題でしょうか。
生駒佑人 けさは火山活動に伴う島全体の避難指示が解除され、間もなく2年を迎える三宅島について取り上げます。
遠藤泰子 以前もこのコーナーで取り上げましたが、島に帰りたくても帰れない人はまだいるんですか。
生駒佑人 はい、島に戻った人たちは復興に取り組んで2度目のお正月となりますが、島に戻っていない人が噴火前の島民のおよそ3割、千人ほどいるとみられています。生活の場を東京などに移し、帰らないことを決めた人もいますが、帰りたくても帰れない人が多い現状はなかなか変わりません。
私は、帰りたくても帰れない島の人を支援する活動をしている三宅島ふるさと再生ネットワークが先月懇親会を開いたのでお邪魔してきました。
森本毅郎 帰れない人を励まそうということですね。
生駒佑人 そうですね。東京巣鴨で開かれた懇親会には、高齢の方を中心に都内23区や八王子、府中などから島の人13人が来ました。食事をしてお酒も入り、にぎやかにお互いの近況を語り合いました。また再生ネットワークに協力している方が31人参加して漫才や踊りなどの出し物を披露したり、参加した人全員でゲームをしたりして、島の人たちに楽しんでもらいました。そして懇親会のおしまいのほうでは、ダ・カーポが作曲した『必ず帰るよ』という歌をみんなで歌いました。
(合 唱)
遠藤泰子 帰りたくても帰れない、切実な気持ちが伝わってきますね。
生駒佑人 非常にそうなんですよ、帰れない理由なんですけれども、以前と変わっておりません。危険な火山ガスの濃度が高いこと、また帰れない人に高齢者が多いのは、島に以前はあった特別養護老人ホームを再開できない、家屋を修繕する費用が賄えないといった理由が挙げられています。そして避難していた人は、以前は比較的まとまって住んでいたのですけれども今は散らばって住んでいます。懇親会に参加した島の方も次のように話しました。
島民A 皆さんとも顔が途切れてしまっていたので、久しぶりに連絡が来ましたので、では参加してみようかという状態だったので……。この懇親会でも初めて参加の人もいて、だいぶ有意義だし、それから皆さん真剣に考えているということで、私も感銘しました。
森本毅郎 ふだん会えないからこそ、こうした機会というのは大事ですよね。
生駒佑人 そうですね。顔を合わせることで元気になるだけではなくて、会うことでふだん言えないつらさ、苦しさを打ち明けて共有することもできますからね。ただ、お互いに連絡がこれまで以上に取りにくくなっています。そこでネットワークでは散らばって住んでいる島民の家を定期的に訪れて、最近の三宅島の情報を伝えたり、お互いの連絡先がわかる電話帳をつくってもいます。
遠藤泰子 高齢者が多いと遠くまででかけるのは大変でしょうから、電話で話せるようになる意味は大きいですよね。
生駒佑人 またネットワークでは、この秋に生活の実態調査も行いました。訪問先にアンケートを配り、50世帯から回収できたということです。調査の集計と分析を担当した大妻女子大学の干川剛史教授はこう話します。
干川 生計の状況です。「とても苦しくなった」とか「苦しくなった」という人を入れますと、7割近い人がやはり1年前と比べて生活が苦しくなっているということであります。今後の生計の見通し、今より楽になりそうだという人は全くいませんで、苦しくなるという方が半数を超えているといったことがみられました。
森本毅郎 生活の苦しさというものも感じられますね。
生駒佑人 また避難後に帰島した回数は10回以上と答えた方が3割弱いる一方で、1回または0回、つまり1回も帰っていないという人が合わせて4割弱います。二極化していることがわかりました。来年2月には被災者生活支援法に基づいた島への引っ越し資金の援助もなくなるということなので、帰れない傾向はますます強くなるかもしれません。
遠藤泰子 帰りたくても帰れない人は、特に高齢者には厳しい状況ですね。
生駒佑人 住宅修繕や生活資金の貸し付けなどにかかわるそのほかの支援制度のほとんども来年2月末、もしくは3月末には申請期限がきます。再生ネットワークの代表、佐藤就之さんは観光も復興には大事だけれども、帰れない人を帰すことこそ復興の基礎になるので、島に戻るための支援は維持してほしいし、火山ガスへの対策の充実や特別養護老人ホームの早い復活も求めていきたいと話されていました。
森本毅郎 阪神淡路大震災のときも、人が戻らない地区というのは復興がなかなか進まなかったということがありましたからね。
生駒佑人 ええ、島の人が安心して帰るための支援をすることこそ島の復興に大きく役立つということを再確認いたしました。また懇親会は楽しく進み、終わりのあいさつを迎えたのですけれども、ある女性が最後に一言だけ言わせてほしいと手を挙げ、次のように話しました。
島民B 本当に、島民たちは心の中では血を流して生きているんです。そういうことを本当に切実に訴えたいと思って、きょう伺うことができて、私はとても幸せに思っております。
遠藤泰子 重く受けとめたいですね。
生駒佑人 そうですね。私もはっとさせられたんですけれども、先ほどの干川教授もこの女性の話を受けて、三宅島の研究を続ける私に「まだ三宅島にかかわっているの」と言う人もいる。噴火から6年たって、三宅島のことを忘れかけている人もいるかもしれないのですけれども、今でも帰れない人がいるということを忘れないでほしいと話されていました。
遠藤泰子 ふるさとで新年を迎えられない方もいることを忘れないようにしたいですね。
生駒佑人 それが本当の意味での復興につながるのではと私も感じました。
森本毅郎 ご苦労さまでした、生駒佑人記者でした。
生駒佑人 ありがとうございました。
遠藤泰子 「人権TODAY」東京都人権啓発センターがお送りしました。
――了――